はじめに結論
保育所等の入所申込書に「希望する保育所等に入所できない場合は、育児休業の延長も許容できる」という欄がある場合、仮にチェックを入れて落選しても、2025年4月以降も育児休業給付金の支給要件は満たすと思います。
(何かあっても責任は取れないので最終的な判断はご自身でお願いします。念のため。)
2025年4月から育休延長が厳格化
いわゆる落選狙いへの対策として、2025年4月から育休延長が厳格化されます。
これまでは市区町村が発行する入所保留通知書(希望する保育所等には入れなかったよ~というお知らせ)を提出すれば、育児休業給付金支給要件を満たすことが可能でした。これが2025年4月からは、2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わりますによると、以下の条件を満たす必要が出てきます。
速やかな職場復帰のために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認めること
つまり、私は落選狙いじゃなくて保育所等に入れる意思はちゃんとありますよ~とハローワークに認めらてもらう必要があるということです。この判断基準が以下の3点になるようです。
- 原則として子が1歳に達する日(*)の翌日以前の日を入所希望日として入所申し込みをしていること
- 申し込んだ保育所等が、合理的な理由※なく自宅から通所に片道30分以上要する施設のみとなっていないこと
- 市区町村に対する保育利用の申し込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示をしていないこと
1、2は分かりやすいです。1は読んで字のごとくですし、2はいくつかの例外を除いて基本的には自宅近くの保育所等に入れるように(落選狙いで遠くの倍率の高い保育園なんかを書くんじゃねえ!)ということなのでしょう。
よくわからなかったのが3の条件です。
「育児休業の延長も許容できる」の扱い
保育所等の入所申込みあるいは別書類として以下のような項目を確認されることがあります。
希望する保育所等に入所できない場合は、育児休業の延長も許容できる
こういった欄にチェックを入れると、保育所等の入所利用調整のために使用する点数が低く(最低点とするところが多いと思う)扱われます。つまり、チェックを入れると落選する確率を高めることができるということです。
これは入所保留となることを希望する旨の意思表示にあたるのでしょうか?言葉だけ見ると、あくまで落選も消極的に「許容」できるだけであって入所を「希望」していることに代わりはないと思うのですが、ちょっと自信がありませんでした。
「延長の許容」は「入所保留の希望」なのか?
そこで少し調べてみたのですが、結論としては延長の許容は入所保留の希望には当たらなさそうです。
以下は令和6年3月22日第206回職業安定分科会の【資料1-2】雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案概要(育児休業給付関係)からの引用ですが、
とのことで、「希望する保育所等に入所できない場合は、育児休業の延長も許容できる」などの表現は、入所保留となることを希望する旨の意思表示には当たらないそうです。
念のため、同分科会の議事録を確認してみても、
「希望する保育所等に入所できない場合は、育児休業の延長も許容できる」という欄を入所申込書に設けて、そこにチェックがある場合には、入所の選考の際に点数を下げる … この表現に沿う限度であれば、この矢羽根にございます入所保留となることを希望する旨の意思表示としては扱わず、これについてはそのままとさせていただきたいと思います…
と説明されており、特に異議も出ていないようなので、延長を許容できる(できれば落選して欲しいとも言うのかもしれない)方はチェックを入れればよいのかなと思います。
ちなみに
上記議事録を見ていて気になったのですが、この「延長の許容」の項目の追加は、2019年に厚生労働省子ども家庭局保育課の事務連絡「育児休業・給付の適正な運用・支給及び公平な利用調整の実現等に向けた運用上の工夫等について」で通達されたもののようです。
当時このような通達をした理由は、上記から引用すると、
当面復職の意思がなく、当初から育児休業の延長を希望する方が入所保留通知書の入手を目的として入園申込みを行い、市町村の事務手続に混乱が生じており、また真に入園を希望する方に不利益が生じている
とあり、まあ今も昔も似たような状況ということなのでしょうか。この「延長の許容」という項目を追加することで、本当に入園したい人が入園できるようにしようという工夫がされたということですね。
で少し前にこの事務連絡が改正されて「「育児休業・給付の適正な運用・支給及び公平な利用調整の実現等に向けた運用上の工夫等について」の一部改正についてというものが通達されたみたいです。そのなかで、
入所申込書に設ける選択肢の文言が、保護者が当該選択肢を選択することにより入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていると直ちにみなされるような文言となることのないよう
とあって、このことからも「延長の許容」は「入所保留の希望」には当たらないということがわかると思います。
で面白いなあと思ったのがなんでわざわざこんな改正としたのかなというところで、少し調べてみると、これまでこの2019年の運用の工夫の文脈(2025年の厳格化ではない)で、市区町村によっては「延長の許容」というまわりくどい表現でなく、「育児休業の延長を希望」という表現を使っていたりしたようです。こうなると2025年の厳格化の運用とややこしいことになるので、表現を見直してねというお達しを出したようです。
確かに、私も当初「延長の許容」と聞いたとき、「保育園には入れたいけど絶対に保育園に入れないと生活できないわけではないから許容できるにチェックなのかな…」と思いました。でも、保育所等に入所させたい人はこの「延長の許容」にチェックを入れある必要はないです。利用調整の点数が下がって不利になるだけです。このような場合では、「育児休業の延長を希望」という表現になっていたほうが確実にチェックを入れずに済み良かったような気もしますが、今回の厳格化で表現が変わると思うので注意した方が良いのかなと思います。
日本語って難しいですね。
(個人的にはわざわざ「許容」とか「希望」みたいな単語は使わず、単に「利用調整の点数を最低点にする」みたいな表現のほうがシンプルでわかりやすいのでは思ったりします。)