こどもNISAに信託報酬ゼロの「ゼロカン」が登場
2027年1月から0~17歳を対象としたこどもNISAがはじまりますね。子供の将来に向けて全世界株式を積み立てるなら、オルカンを候補にしている方も多いかなと思います。そんな中SBIから、「SBI・ゼロ・オールカントリー・インデックス・ファンド」、愛称「ゼロカン」の発表がありました。
【こどもNISA専用は信託報酬ゼロ】SBIアセットから待望の超低コストオールカントリーファンドが登場!|SBI証券
こどもNISA専用で、信託報酬は年0%。2026年11月17日に設定予定ですが、一般の購入開始はこどもNISAの取扱開始日に準じます。
信託報酬ゼロは魅力的ですが、もともと低コストのオルカンと比べて、実際にいくら違うのでしょうか。こどもNISAの年間投資枠60万円を月5万円ずつ積み立てる場合、値動きを考えなければ、初年度の信託報酬差は約160円です。長く積み立てるとどこまで差が広がるのか、購入できる金額と期間に合わせて比べてみます。
投資先の指数は同じ
まずは、ゼロカンとオルカンの基本的なおさらいです。
両方とも、日本を含む世界の株式に投資し、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)」への連動を目指します。為替ヘッジも行いません。
| 比較項目 | ゼロカン | オルカン |
|---|---|---|
| 目標とする指数 | MSCI ACWI(配当込み、円換算) | 同左 |
| 通常の信託報酬(税込・年率) | 0% | 0.05775%以内 |
| 購入できる口座 | こどもNISA専用 | NISA・課税口座など |
| 運用方法 | 全世界株式のマザーファンドに投資 | 国内・先進国・新興国株式の3つのマザーファンドに投資 |
| 設定日 | 2026年11月17日予定 | 2018年10月31日 |
SBIには他にも「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」や「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」など全世界株式ファンドがありますが、ゼロカンはオルカンと同じ指数を目指す新しいファンドです。
もっとも、同じ指数でも運用会社や売買の方法は異なります。指数と実際の成績にどの程度の差が出るかは、運用開始後に確認する必要があります。
信託報酬0%でも、運用にかかる費用は残る
投資信託では、運用・管理などの対価である信託報酬のほかに、株式を売買する手数料や監査費用などがかかるのが一般的です。ゼロカンは信託報酬は0%ですが、売買委託手数料や監査報酬などはファンドが負担します。オルカンにもこうした費用はあるため、信託報酬以外の費用がかかること自体は、ゼロカン特有のデメリットではなく、一般的な投資信託の特徴です。
ただし、信託報酬に含まれる業務の範囲には違いがあります。オルカンでは、目論見書の作成や交付運用報告書などの送付は、信託報酬の対価として行う業務に含まれています。一方、ゼロカンの有価証券届出書(2026年10月1日提出)によれば、目論見書や運用報告書の作成・印刷・交付費用を、信託報酬とは別にファンドが負担することになっています。
この違いから、ゼロカンはオルカンよりも信託報酬以外の費用が多くなる可能性があります。ただし、これは費用負担の範囲の違いであり、ゼロカンの費用総額がオルカンより高くなると決まったわけではありません。具体的にいくらかかり、信託報酬ゼロのメリットがどれだけ残るかは、運用開始後の実績を見ないと分かりませんね…
貸株の報酬にも違いがあります。保有する株式などを貸して得る収益(品貸料)から、運用会社・信託銀行が受け取れる報酬の上限は、税込でゼロカンが55%、オルカンが49.5%です。同じ貸株収益から上限の割合で報酬を差し引くなら、ファンドに残る額はオルカンのほうが多くなります。ただ、これも貸株収益に対する割合なだけで、保有資産に毎年かかる費用率というわけではないので、実際にどれくらい差が出るかは運用開始後の実績を見ないと分かりません。
以下の試算は、その他費用や貸株収益の差を含めず、通常の信託報酬の差だけを取り出したものです。
こどもNISAの枠で、どれくらいお得になる?
こどもNISAの年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は購入額ベースで600万円です。毎月均等に積み立てるなら月5万円までで、売却せずに積み立てる場合は最短10年で600万円に届きます。
年間60万円の積立なら、初年度の差は約160円
オルカンの通常の信託報酬を年0.05775%として、年間投資枠と保有限度額に合わせて計算します。ここでは値動きと信託報酬以外の費用は考慮しません。
| 積立・保有の条件 | 信託報酬だけの年間差額 |
|---|---|
| 年間投資枠60万円を毎月末に5万円ずつ積立 | 初年度は約160円 |
| 積立後の残高600万円を1年間保有 | 約3,465円 |
なお、オルカンにはファンド全体の純資産総額に応じた信託報酬の引下げ(受益者還元型信託報酬)があります。試算に使う0.05775%は通常の信託報酬の上限なので、ゼロカンのメリットを少し大きめに見積もる計算です。
積立額と使う時期で、累計の差が変わる
次は、信託報酬差だけによる最終残高の違いを試算しました。0歳から17歳までの18年間を使える場合と、購入できる期間が残り8年の場合を比べます。どのケースも年間60万円・購入額600万円の範囲内です。
| 積立・保有の例 | 投資元本 | 年0%で運用した場合の差 | 年5%で運用した場合の差 | 年10%で運用した場合の差 |
|---|---|---|---|---|
| 月1万円を18年間積立 | 216万円 | 約1.1万円 | 約1.9万円 | 約3.4万円 |
| 月5万円を10年間積立し、その後8年間保有 | 600万円 | 約4.5万円 | 約8.4万円 | 約15.4万円 |
| 購入できる期間が残り8年で、月5万円を8年間積立 | 480万円 | 約1.1万円 | 約1.4万円 | 約1.7万円 |
毎月末に購入し、途中売却・分配はないものとします。両ファンドの信託報酬控除前の運用利回りを年0%・5%・10%、通常の信託報酬をゼロカン0%・オルカン0.05775%に固定し、その他費用は計算に含めていません。今回の試算で差が最も大きいのは、月5万円を10年間積み立ててその後8年間保有し、年10%で運用できたケースで、約15.4万円でした。これを大きいと見るか小さいと見るか…
ただ、購入できる期間と保有できる期間は別です。SBI証券は、18歳以降も保有中のゼロカンには信託報酬0%を継続すると案内しています。
18歳に到達すると新規購入できなくなります。一方で、すでに保有しているゼロカンは成人のNISAつみたて投資枠で継続保有でき、継続保有中の信託報酬は年率0.00%です。
上の「月5万円を10年間」のケースで、積立後の保有を8年間から20年間に延ばすと、同じ仮定で差は約8.6万円(年0%)/約28.4万円(年5%)/約90.3万円(年10%)になります。
運用実績がなく、制度に関連する繰上償還条件がある
オルカンは2018年に設定されていますが、ゼロカンはまだ運用開始前です。ゼロカンの実際の費用や、指数にどれだけ近い成績を出せるかは、過去の実績から比較できません。なのでやはり安心感はオルカンの方があるかなとは思います。
また、途中でファンドの運用を終える「繰上償還」の条件も気になります。ゼロカンでは、純資産総額が10億円を下回る場合などに加えて、こどもNISAが改廃された場合も信託を終了できる条件に含まれています。オルカンにも、受益権が10億口を下回る場合などの繰上償還条件はありますが、こどもNISAの改廃を個別に挙げた条件はありません。
過去ジュニアNISAが廃止された例もあるので少々気になる方もいるかもしれません。
最終判断は運用開始後でも遅くないかも…
こどもNISAをやる場合、ゼロカンは検討する価値がありそうです。信託報酬ゼロは確かに魅力的です。ただ、実際の費用や運用成績は運用開始後に確認する必要がありそうです。
まずはゼロカンの目論見書から、その他費用、貸株報酬、購入・継続保有の条件、繰上償還条件を改めて確認してから判断したいところです。